統合失調症および妄想性障害

統合失調症

統合失調症とは

統合失調症とは幻覚や妄想、意欲低下、感情表現の平坦化など、病気だと自覚するのが難しい症状が良く現れる疾患です。100人に1人が発症すると報告されています。若年層に多くみられ、高齢になって発症する症例は少ない傾向にあります。急激に強い症状が現れることもありますが、徐々に進行する方もいます。症状を安定させ、再発を防ぐ治療を継続することが大切です。

統合失調症の原因

下記のような仮説が立てられていますが、未だに原因は解明されていません。

過剰なドーパミン

神経系の機能に障害が起こると、精神状態がうまく正常に維持できなくなります。
神経細胞は、ドーパミンやセロトニンなどの神経伝達物質によって、情報を伝達しています。ドーパミンを活性化させる薬には、幻覚・妄想など、統合失調症と似た症状が副作用として起こることがあります。この副作用から統合失調症も同じように、過剰なドーパミンが原因で発症しているのではないかという説も唱えられています。
しかし過度なストレスや不安によって、ドーパミンが必要以上に働くこともあるため、一概にそうとは言えません。

多くの要因が重なり合って
発症する

脆弱性のある要因(脳のトラブルや性格、遺伝的要因など)に、ストレスや環境の変化などが重なって発症するという説もあります。この説は、「ストレス・脆弱性仮説」と言われています。

その他

胎児期や出産時の低酸素症などが関与しているのではないかとも言われています。しかし現在のところ、原因に関しては分からないことが多くあります。

統合失調症のタイプ

症状の内容や治療効果の現れ方は患者様一人ひとり異なりますが、発症した時期や症状、予後などによって、「破瓜(はか)型」「妄想型」「緊張型」の3種類に分類できます。

破瓜型

最も多くみられ、10~20代に発症しやすい型です。進行スピードは遅めで、症状が長引きやすい傾向にあります。感情や意欲、考えに障害が起こりやすいことから、生活の乱れや変化、支離滅裂な言動、感情の平坦化などがみられやすいタイプだと言われています。

妄想型

18歳前後から発症するケースもありますが、30歳前後に発症するケースも多い型です。幻覚・妄想の症状が主にみられます。全タイプの中では最も症状が軽く、それ以外の症状はほとんど現れません。しかし、生活行動に問題を生じやすいタイプともいえます。

緊張型

20歳前後の発症者が多く、症状が重い傾向にある型です。妄想や幻覚、不眠、激しい興奮、昏迷状態(こんめいじょうたい:周囲への反応が極端に弱くなる状態)など、激しい症状がよくみられます。同じ動作を繰り返したり、相手と同じ動作を真似したりするなど、緊張症状が出現するケースもあります。

統合失調症の症状

「陽性症状」「陰性症状」「認知障害」の3種類に分かれています。陽性症状とは、幻覚・妄想などの症状のことです。陰性症状とは、消耗期・回復期に生じる慢性症状で、認知障害とは知覚や記憶、注意、実行などの脳機能に関する障害のことを指します。幻覚・幻聴とは、実際にはないものを見たり聞いたりすることです。そして妄想とは、間違ったことを信じ込み、訂正を受け入れることができない状態を指します。
以下のような症状に心当たりがありましたら、心療内科へ受診しましょう。

陽性症状

など

陰性症状

など

認知障害

など

統合失調症の症状や治療の経過

症状の経過は、「前兆期」「急性期」「休息期」「回復期」「安定期」の段階に分かれています。経過の推移を把握しておくことで、症状の変化が掴みやすくなります。

前兆期

前兆として、気分障害(うつ病・双極性障害)のような症状が起こる時期です。不安や焦燥感、感覚過敏、集中力や意欲の低下、不眠、食欲減退、頭痛などの症状がみられます。統合失調症と診断するのは難しい時期ですが、このような症状に悩んでいる時に受診すると、より治療効果は高くなります。

急性期

統合失調症特有の症状が起こる時期です。前兆期に起こった症状(不安や緊張、感覚過敏など)が重くなることもあります。幻覚や妄想といった症状が生じると人間関係のトラブルが起こりやすくなるため、日常生活での困りごとも大きくなります。

休息期

陰性症状(意欲の低下・感覚の鈍麻など)が起こる時期です。この時期に入ると、陽性症状は落ち着きます。ただし気持ちが不安定になるため、些細なことで陽性反応を起こし、急性期へ戻ってしまうケースも少なくありません。焦らず、ゆっくり回復を目指すよう考えることが大切です。

回復期

治療効果が発揮され、回復・症状の安定へ向かう時期です。症状が落ち着きやすくなる時期ですが、将来への不安や焦燥感なども生じやすくなるため、引き続き気を付けていく必要があります。

安定期

状態が落ち着いてくる時期です。発症する前の状態に戻ることもありますが、急性期の症状が若干残る方や、回復期の陰性症状が少し続く方もいます。
安定している時期とはいえ、前兆期のような状態に戻る可能性もあります。再発を防ぐためには、きちんと症状をコントロールし続けることが重要です。治療開始から適切な薬物療法を続けた結果、安定できるようになりましたら、薬の量を調整しながら再発率低下に努めていきます。

再発予防のために

再発するケースが多い疾患なので、症状が良くなっても服薬を続けないといけません。数年後の再発率は60~80%と報告されています。「調子が良くなったから」と勝手に自己判断した時に、再発してしまうケースは多々あります。
しかし、きちんと服薬を続けていけば、再発率は下がっていきます。
減薬や服用の中断は、医師と相談してから行いましょう。

急性一過性精神病性障害

主な症状

妄想や幻覚・幻聴、支離滅裂な会話、錯乱状態などの症状が現れた状態、また、これらの症状が複数組み合わさり、急に発症した状態になります。
症状が現れ始め、障害が完成されるまでの期間は、2週間未満だとされています。
急性発症が急性ストレス因子を伴っているケースと、伴っていないケースに分かれています。

治療方法

抗精神病薬を用いる薬物療法を行います。外来で治療できる場合もありますが、症状によっては、外来での治療が困難なこともあります。錯乱状態に陥っていたり、暴力・衝動行為を行ったりしている場合は、入院・措置入院を選択します。

発病原因および治療経過

配偶者との死別や失職、結婚、テロや暴力などの心理的外傷などがストレス因子となり、発症します。長期間継続した困難や苦労などは、このストレス因子に該当しません。
しかし急性一過性精神病性障害の多くは、ストレス因子とは関係なく発症するとも報告されています。
多くの場合は2~3ヵ月以内、数週間または数日以内に薬物療法を行うと、完全に回復します。

妄想性障害

妄想とは

精神医学上、妄想とは、「「現実ではあり得ない」と分かっている状態だが、訂正ができない状態」を指します。

症状

妄想性障害とは、先述した「妄想」が長期間続いてしまう疾患です。妄想を信じ込むことで、人間関係のトラブルに巻き込まれることもあります。
また、統合失調症での妄想と、妄想性障害での妄想はそれぞれ違っています。
妄想性障害の場合は、妄想に関連した幻覚のみ現れます。統合失調症とは異なり、感覚鈍麻や意欲の減退はみられません。

妄想性障害のタイプ

DSM-5に基づいて、下記のように分類されています。

被愛型

特定の人物が自分に対して、心を寄せているという妄想
例:「あの芸能人と私は恋愛関係にあるのだ」と思い込む

誇大型

自分にはずば抜けた才能がある、歴史に残る偉大な発見をしたなどと思い込む妄想、有名人と特別な関係にあるという妄想
例:自分は有名人だという妄想

嫉妬型

パートナーが浮気・不倫していると思い込む妄想
例:「少し服が乱れている」など、些細なことを証拠にして不倫していると思い込む

被害型

不当な被害嫌がらせを受けている、策謀などを企てられているという妄想
例:隣人の騒音に対して、「自分への嫌がらせだ」と思い込む

身体型

自分の身体の感覚・特徴に関する妄想
例:「自分の身体は臭い」「顔がとても醜い」と思い込む

頻度や特徴

妄想性障害は0.2%ほどの方が発症すると言われており、一番多いのは被害型です。男女比の差は特にないとされていますが、嫉妬型は男性に多い傾向があります。
若年層の患者もいますが、高齢者の患者数も多くみられます。
統合失調症よりも、日常生活などへの支障は少なめです。しかし中には統合失調症を併発する患者様もいます。

治療

薬への反応は良くありません。
また、自分は病気だという事実を認めないため、治療を受けない方も少なくありません。周囲への悪影響が大きい場合は、入院も検討します。
効果があまり期待できないとはいえ、薬物療法を続けながらご家族や周囲の方のサポートを得て、環境を整えていくことが重要です。

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