更年期障害

更年期障害とはどんな病気?

更年期障害とはどんな病気?更年期とは、閉経前後を合わせた10年の時期のことです。閉経の平均年齢はおよそ50歳とされており、多くの方は45~55歳の時期に、更年期を迎えます。閉経のタイミングには個人差があるため、40代前半から更年期に入る方もいます。
更年期に入ると、卵巣機能が衰え始めます。その結果、更年期障害が起こるのです。
更年期障害は、エストロゲンの分泌が急激に減少することで出現します。
女性ホルモンの一種であるエストロゲン(卵巣ホルモン)は、卵巣から分泌され、初経や妊娠、出産、閉経など、女性の身に起こる変化をコントロールしています。
しかしエストロゲンの分泌量は40歳頃から低下し始めます。このエストロゲンの低下によって、更年期障害が起こるのです。
また、脳の視床下部にある、自律神経の中枢に影響を与えるため、自律神経失調症を引き起こすこともあります。
さらに、更年期障害が起こりやすい時期は、女性にとって、多くの変化にさらされやすい時期でもあります。家庭や社会環境の変化による精神的ストレスが、大脳皮質・大脳辺縁系に影響を及ぼすことで、気分の落ち込みや情緒不安定などの精神症状が現れやすくなります。
この自律神経失調症状と、精神的な症状がお互い影響し合うことによって、症状の悪循環が起こりやすくなります。
更年期障害の症状は3つに分かれており、①自律神経失調症状、②精神症状、③その他の症状に分類されていますが、自律神経失調症状と精神症状は、非常に入り混じっています。
自律神経性更年期障害の代表的としては、ホットフラッシュ(のぼせ感・ほてり感)、発汗などが挙げられます。
ホットフラッシュは閉経女性の40〜80%にみられる症状で、1年~数年ほど続くことが多く、長期間にわたるケースもあります。しかし、その中でも治療が必要とされるケースは、25%程度だと言われています。
精神症状として起こる憂うつは、閉経女性の約40%にみられる症状です。また、近年の調査によりますと、日本の更年期女性は、ホットフラッシュよりも肩こりや憂うつに悩む傾向が強いと指摘されています。
更年期に生じる症状の内容は、一人ひとり異なります。この更年期症状が重く、日常生活に支障をきたしてしまう状態になると「更年期障害」と判定されます。更年期障害になると、適切な治療を受ける必要があります。

更年期障害を起こす背景

更年期障害は、ホルモン低下だけではなく、外的なストレスの影響によって、症状が重くなったり軽くなったりします。
特に更年期障害が起こる40~50代は、子供の成長と巣立ち、親の病気や死などの変化が重なりやすくなる時期です。また、責任のある立場に就くことも多くなります。それらのストレスがうまく解消できなくなると、更年期障害が重くなりやすいとされています。

男性にも起こりうる更年期障害

更年期障害は女性だけのものではありません。近年では40~50代の男性にも、更年期障害と似た症状が起こると判明されるようになりました。
実は男性も女性と同様、男性ホルモンの一種であるテストステロンが減少します。ただ女性と比べて、ホルモンが減少するスピードは緩やかなため、症状に気付かないケースも多いです。
最近では50歳前後の男性が、自律神経失調症と似た症状に悩まされるケースが増加傾向にあると言われています。「自律神経失調症」と診断されることがほとんどなのですが、年齢と症状から、「男性の更年期」である可能性もあります。
女性の更年期と似ている点は、心理的ストレスによる不安や抑うつなどの精神症状が現れることです。しかし、エストロゲンの減少によって起こるホットフラッシュのような症状は、男性には起こりません。
ただし、性的能力の衰えを自覚する方が多く、泌尿器科での男性ホルモン補充を受ける方も少なくありません。

更年期障害の主な症状

身体症状

精神症状

更年期障害の治療方法

更年期障害の治療方法症状の重さは、患者様の本来の気質や精神状態、周囲の環境などによって変動します。そのためまずは、生活スタイルや環境を見直すことが必要です。
発汗やホットフラッシュなどの自律神経失調症状がみられる場合は、ホルモン補充療法(HRT:Hormone Replacement Therapy)や薬物療法が選択されます。

また、心理的・社会的要因によって引き起こされる精神症状につきましては、漢方薬をメインとした薬物療法が有効とされています。

ホルモン補充療法

ホルモン補充療法(HRT)とは、更年期に伴って減少した女性ホルモンのエストロゲンとプロゲステロンを薬剤で補い、症状を改善させる治療法です。
治療では、女性ホルモンが含まれている錠剤や貼り薬が処方されます。処方前には血液検査や尿検査で、現在のホルモンの分泌量を確かめてから、薬の量を決めていきます。
なお、乳がんや子宮体がんなど、エストロゲン分泌との関係がある疾患にかかったことのある方は、ホルモン補充療法を受けることはできません。そのためホルモン補充療法を受ける前には必ず、乳がん検診と子宮体がん検診を受けていただきます。
またホルモン補充療法を受けている間は、少なくとも6ヵ月~1年に一度は、血液検査や乳がん・子宮体がん検診を受けることが推奨されています。
ちなみに日本でホルモン補充療法を受けている女性は少なく、わずか1.7%だと報告されています。
※当院ではホルモン補充療法に対応していませんが、ホルモン補充療法に対応している医療機関へご紹介することは可能です。お気軽にご相談ください。

薬物療法

更年期障害の治療では、漢方薬がよく用いられています。漢方薬は効き目が出るまで時間がかかる薬ですが、副作用は少なく、安心して長期服用することが可能です。
また、漢方には西洋医学にはない概念があり、体力の有無や、「気・血・水」という要素から一人ひとりの体質を診て、各タイプに合わせた漢方薬を処方するという方法で、行われています。
また、精神症状が重い方や、心因性による更年期障害に悩んでいる方には、抗不安剤・抗うつ剤を処方することもあります。

生活習慣の改善

「睡眠時間を確保する」「睡眠の質を高める」「運動を習慣化させる」「栄養バランスを見直す」ことは、更年期障害の解消に有効です。生活習慣の乱れも、更年期障害を重くさせる原因になります。

睡眠、運動の習慣の改善

「眠れない」症状も、更年期障害の症状の一つです。しかしその状態が長引くと、疲れが解消できず、気分も落ち込みやすくなります。夜更かししがちな方は早寝早起きする習慣を作る、寝つきが悪い方は睡眠導入剤を処方してもらうなど、睡眠の質・量を確保することが重要です。
また、適度な運動を行うと程よく身体が疲れるため、寝つきが良くなります。ストレスを溜め込み続けると、ストレスホルモンなどの影響によって、血行不良が引き起こされやすくなります。運動する習慣ができると血液の循環が良くなるだけでなく、自律神経も整うため、呼吸器や循環器にも良い影響を与えます。

食事の改善

大豆に含まれているイソフラボンの働きは、女性ホルモンと非常に似ています。そのため女性には特に、大豆食品をこまめに摂ることをお勧めします。また、女性ホルモンが減少すると骨粗しょう症のリスクが高まるため、カルシウムとビタミンD・ビタミンKはぜひ、一緒に摂るようにしましょう。ちなみにビタミンD・ビタミンKには、カルシウムの吸収を促す作用が含まれています。
また、亜鉛は、男性ホルモンであるテストステロンの生成をサポートする働きを持っています。牡蠣をはじめとする魚介類やレバー、海藻類などには、亜鉛が豊富に含まれています。亜鉛を効率よく吸収するには、ビタミンCを一緒に摂ることが重要です。

ご来院いただく際の注意点

更年期障害を軽減させるには、運動の習慣化が有効だとされています。
軽めのウォーキングや体操などでも問題ありませんので、運動する習慣を身につけることをお勧めします。
また「更年期障害だと思っていたら、女性特有の疾患だった」というケースもあります。通常の人間ドックだけでなく、女性特有の疾患を見つけるオプション検査もぜひ、追加しましょう。
男性の場合は、男性ホルモンの一種であるテストステロンの減少によって、更年期障害が起こります。テストステロンの数値は、泌尿器科で調べることが可能です。
ただし、お近くの泌尿器科で男性更年期専門の外来がない場合は、症状に合わせて受診することも可能です。
性欲減退やEDの症状がみられる場合は泌尿器科へ、うつなどの症状がある場合は、心療内科や精神科への受診を推奨します。

更年期障害チェックリスト

  • めまいや肩こり、のぼせ感がある
  • ホットフラッシュ(ほてり感)がみられる
  • 何もしていないのに動悸がする、暑くないのに汗をかく
  • 夜、寝つきが悪くなった、眠りが浅くすぐに目が覚めてしまう
  • 些細なことでイライラしやすくなった、怒りっぽくなった
  • 気分の落ち込みや憂うつ感があって何もしたくない、食欲不振になった
  • 手足が冷たい、下半身が冷えやすくなった
  • 頭が重い、頭痛や耳鳴りがする
  • 皮膚の表面が痺れる、かゆい
  • 生理の周期が不規則になった、経血の量が少なくなった
  • 性交痛や性器のかゆみ、性交時の出血がある
  • トイレが近くなった、尿漏れや排尿痛がある
  • 便秘や下痢、下腹部痛に悩んでいる
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